持ち物の名前書きで娘と初めて共同作業した話

上の娘の小学校入学準備で一番大変だったことは、何と言っても持ち物の名前書きに尽きます。入学準備ともなれば、みんなはりきって新品の文房具やら人気キャラクターのお弁当箱やら、揃って同じようなものを買って持ってくるでしょう。

そのことは母親なら誰でも簡単に予想できます。持ち物に名前を書かなければ、下手をすれば登校初日で見事に紛失、大人数でグループワークでもしようものならごちゃごちゃに混ざってすぐに誰のものか分からなくなってしまって大泣き、なんて目に見えています。

それは分かるんですが、学校側の入学準備のプリントには、たとえば色鉛筆なら容器だけではなく中身の一本一本まですべて名前を書くこと!とかなり厳しい言い方で指示が書かれていたのです。

これは思ったよりきつかった。今思えば、オリジナルお名前シールを作ってくれる業者さんにネットでお願いすればよかったのかもしれないんです。昔からそういうものは入学準備グッズとしてあったし、私だって見慣れてもいました。でも、既製フォントの丸文字が逆に無機質に思えて、私自身が何となく好きになれなかったんです。

なので、大変なのは分かっていたけど、私が全部書くことに決めました。しかも、こうなったら極力お金をかけずにいこうなんて思って、家にある油性ペンと、もう要らなくなったおばあちゃんのダビング用VHSビデオについていたラベルシールの山を引っ張り出してきました。

始めてからまず取り組んだのは、シールを切ることでした。新聞紙を敷いた上でハサミやカッターを駆使しての地道な作業。連絡帳やノートといった紙物に貼るのは適当に名刺サイズの半分くらいのものを、はがれやすそうな小物類のためには角を落としたランダムな四角形を、あとは鉛筆やペンの幅を見ながら細く小さいものを、何十枚も切りました。100枚ではすみませんよね、もちろんもっとありました。

楽なはずの単純作業なのに、10分もやっていると不思議と気が滅入りはじめるんです。

せめて持ち物のリストを作って数を数えていればよかったのに、作業していると不思議と手元だけに集中して思考停止してしまって、とにかく沢山あれば困らないよねという感じで黙々とシールを量産していきました。

ハサミを持つ手が痛くなって嫌になってきた頃、ようやく油性ペンを手に取りました。そしてふと、ここからが本番なんじゃないの?と気づいた時には既に肩はガチガチ。もしかしなくてもその通り、目の前にずらりと並んだ持ち物と、切り出した大小さまざまなシールを前に、名前を書いて貼るという本番はそれからでした。正直、たかが入学準備に心が折れそうになりました。

こまごましたものを見ると、例えばハサミなんて、おしゃれな細身の形のものを買ってしまったせいで、どこにシールを貼ればいいか分からないし、そもそも十分なスペースがないんです。こういう場合はどうしたらいいんだろうなんてぼんやり考えているうちに、自分がとんでもない苦行に足をつっこんでしまったことに気づいたのでした。

入学準備で娘と初めての共同作業

無責任にも入学準備を投げ出しそうになった私を引き留めてくれたのは、入学をひかえた娘本人でした。夫と外遊びから帰ってきた娘は「何やってるの?」と私の傍へやってきたかと思うと、並んだ文房具に目を輝かせて「ねえこれ、あたしのだよね!」とはしゃぎだし、私がこれからしようとしていることを悟るや否や「一緒に入学準備したい」と言ってくれたのです。

私も夫も驚きました。でも、そういえば娘はとっくに自分の名前を書けるようになっていたんです。娘の名前はすべて平仮名なので、苗字だけちょっと練習すれば大人と同じように書けるようになるよ、と言って教えたのがちょうど幼稚園の年長さんになった頃。

娘にとっては、入学準備で自分の持ち物に自分の名前を自分で書くということは、特別でも何でもない、ごく当たり前のことに思えたのでしょう。私は逆に、母親である私が娘に代わって入学準備を全部やらなければならないなんて思いこんでいたのです。入学準備のプリントを読み返しても、母親が書かなければならないなんて決まりは当然ありませんでした。大人が書こうが子どもが書こうが、要はきちんと読めればいい。娘がきちんと誰にでも読めるような字を書ければいいのです。

娘もそれはきちんと理解してくれていました。こんなに頼もしくなっていたんだな…と、今更ながら娘がもう小学生になるんだという実感がわいてきました。

想定外の共同作業は、娘だけではなく夫も加わってくれて、とても楽しいものになりました。筆記用具に貼る小さいシールに細かい字を書くのは主に私と夫が担当しましたが、他はほとんど娘が自分で書きました。

最初は油性ペンはにじむし、バランスも悪いし、何枚かは失敗しました。

私が無計画にどっさりシールを切っていたことは結果的に正解でした。それでも、3時間近くかけてすべての持ち物にシールを貼り終える頃には娘の名前はずいぶん上手になりましたし、気づけば私の肩こりも気にならなくなっていました。

「難しかったし大変だったけど、楽しかったね」

娘の言葉に私も夫もうなずいて、つい娘を抱きしめました。私の負担が減ったというだけではなく、家族全員で作業をするというのはやっぱり心強いものですね。私も夫も娘も、自然と楽しめたのです。

家族の文字が混在する持ち物シールが、娘の手垢でボロボロになるまで使われるといいなと思います。誰かに「字下手だね」と笑われるとか、読みにくいとか、そういうことはあるかもしれません。それでも、娘にとってはとてもいいことだったと思っています。私にとっても、今も大切な思い出です。

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